What is The Hyper Print Art


これはオリエント急行でヴェニスからパリまで旅行した時の思い出を作品にしました。車内誌、切符、荷札、個室にあったコースターをアレンジして作りました。芸術品にするためには個人の写真や個人情報などが入らないようにしなければなりません。額はこの作品に合わせた特注です。オリエント急行の車内誌に、きれいな絵で描かれた経路図がありましたが、それを横に並べ全体を見て見たくなった、と言うのが作るきっかけでした。


ハイパー・プリント・アートとは

すでにいくつかの作品をご覧いただきましたが、ここでハイパー・プリント・アートとは何かを定義しましょう。簡単に言えば、印刷物を切り貼りし、並べ直して額に入れれば完成ですが、芸術品のレベルまで到達させるには色々な制約、センスなどが求められます。まず、どんな印刷物でもいい、と言う訳ではありません。

・材料(印刷物である事)  

音楽会などのプログラムや切符、コンサート用チラシ、ワインのラベル(エチケット)、滞在したホテル、旅館のブローシャー、グッズ、航空券、飛行機の機内誌、搭乗券、観光地のチラシ、案内図、展覧会のチラシ、切符、解説書など、そこに行かなければ貰えないもの、買えないものが材料。コンサートのプログラムは参加しなければ買えませんし、ワインのラベルも、ワインを買わなければ手に入らず、ラベルだけを買うことは出来ません。

・自分で撮影したものは不可 専門家がデザインし、印刷したもののみを利用しなければばなりません。

 

すでに述べましたように、材料を部分的に切り貼りし、複数枚アレンジして額に入れる。これがハイパー・プリント・アートですが、切り貼りするので同じ作品は2個作れません。(まったく同じものを2っ作れないのも芸術品の特徴です)印刷物(Print)をより上位の概念(Hyper)で再結合し、芸術(Art)のレベルまで引き上げる。印刷物はプロの写真家が写真を撮り(芸術品)デザイナーが割り付けを行い、作られますが、それを一旦バラバラにし、内容あるいは印象を凝縮させ、エッセンスのみを抽出し、より上位の概念でまとめ直す。これがハイパー・プリント・アート(HPA)です。

 材料からどの部分を切り出すかは、最も重要なところで、ここに知識や見識が求められます。コンサートのプログラムの場合は、当日の演奏に最も関連した部分、あるいはその曲の過去や作曲家に関するもので、凝縮度のもっとも高いものなどを、選び出す必要があります。しかし、例えば音楽会のプログラムでも、子供のピアノ発表会のプログラムでは芸術品には成り難いのです、プライベート過ぎるからです。したがってどんなコンサートか、も重要な点です。多くの人に見て頂いた時、興味や感動を共有できるか、が問われます。

 

最後は、それら紙片をどう、アレンジするかですが、それはセンスによります。完成した芸術は新たな雰囲気と印象を持ち、良いものはまさに芸術品となるのです。有名画家が描いた油絵、いわゆる芸術と自分の作ったHPAを横に並べ、力の比較をするのも作る喜びの一つです。

HPAはフラワーアレンジメント(お花)やガーデニングと共通点があります。どんな花を組み合わせて、どんな花瓶にいれ、どこに置くか、これがフラワーアレンジメントです。組み合わせの悪い花を混ぜると、良い作品にはなりません。ガーデニングも、どこに、どんな草花を植え、道をどうつけるか、の設計や、季節ごとのバランスも重要です。これらはレベルが低いと芸術品とは呼べませんが、見事な芸術品のレベルのものは沢山あります。

 

・材料にはそれぞれテーマ性があるので、プログラムとワインのラベルを混ぜる、などと言う事はしない事。

・有名芸術家の作品のように、高級ワインのラベルで作られたHPAは時間を経るごとに価値が上がる。これも楽しみの一つです。 

・有名な演奏家のリサイタルや記念コンサート、一流のキャストが揃ったオペラなど、時代ごとに大きな反響を呼んだコンサートがありますが、それを材料にしたHPAは多くの人にとって忘れがたいもので、そのようなコンサートのHPAはだんだん値打ちがあがります。これも芸術品の持っている特性の一つです。人に感動や共感を与えるもの、と成るからです。 

・HPAと油絵を比べて、一つだけ違う点があります。それは遠くから見るより近づいて見ることが多い点です。近づき内容を読む事によって、作品を単に感覚的に評価するだけでなく、持っている知識や見識が有れば、より興味がわく点です。良く見てから、あー、このキャストで、この演目なら、さぞや素晴らしかったに違いない、と共感出来たり、これらのワインのラベルのまとめ方はすばらしい、など、知識や見識があると、より興味がわくのです。

 ・ワインのラベルの場合などで、下に布を敷き、その上にラベルを並べると全体の雰囲気が、よりしっかりする場合が有ります。

 

1957年からHPA作品を作り始めましたが、初期についてはFirst Stage of Hyper Print Artをごらんください。

また、ワイン、旅行、コンサートに関するHPA は以下をご覧ください。

HPA of  Wine        HPA of  Travel     HPA of  Concert   

 

最後にちょっと変わったHPAを2個ご覧に入れます。 また、私が英国で見つけたものもご覧に入れます。      

これは2015年に国立新美術館で開催されたマグリット展で買ったマグリットの絵皿をモチーフにして作りました。プラスチックの皿と絵葉書をあしらったものです。幅は90センチほどあります。 

これはグッチのスカーフです。1998年ごろに作りました。


英国で見つけたものを紹介いたします。これは私が定義したThe Hyper Print Artとして作者が作ったものではなく、30年ほど前に、偶然、英国の骨董屋で見つけたもので、「あ!私と同じ様な事をやっている方がおられるな!」と思い買ったのです。もう、ちょっと汚れていますが、中々いいと思っておりますが、これは陶器の皿に、リキュールか何かの瓶に貼られている帯を剥がして、皿にノリ付けしたようです。